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貸切バスを安全に利用するために|国土交通省が定めるルールと利用者が押さえるべきポイント

2025-12-12 ロケバス

貸切バスを安全に利用するために|国土交通省が定めるルールと利用者が押さえるべきポイント

貸切バスは、ロケや撮影、旅行などで欠かせない移動手段である一方、一度事故が起きると被害が大きくなる交通手段でもあります。過去の重大事故を受け、国土交通省は貸切バス事業者に対する安全規制やガイドラインを強化しており、利用者側も最低限のルールとポイントを理解しておくことが、安全な利用につながります。

 

そこで、ここでは国土交通省が定める主なルールと制度を整理しつつ「利用者が実際に何を確認すればよいか」という視点で、安全な貸切バス利用のポイントを解説します。

 

貸切バスを取り巻く法制度と安全対策の全体像

 

貸切バス事業は「道路運送法」や「旅客自動車運送事業運輸規則」に基づき許可制となっており、運転手の労働時間・休息時間は「自動車運転者の労働時間等の改善基準告示」により細かく定められています。

 

また、過労運転や行程の詰め込みによる事故を防ぐため、国土交通省は「輸送の安全を確保するための貸切バス選定・利用ガイドライン」を策定し、旅行会社や学校、自治体など発注者が貸切バス事業者を選ぶ際のポイントを示しています。

 

さらに、事業者ごとの安全への取り組みを「見える化」する仕組みとして「貸切バス事業者安全性評価認定制度(セーフティバス)」が導入され、国土交通省と日本バス協会が認定事業者を公表しています。

 

つまり、

  • ・法令に基づく最低限のルール(運転時間・休息・保険など)
  • ・事業者の安全度合いを見える化する仕組み(セーフティバス)
  • ・利用者向けの選定・利用ガイドライン
という三層構造で安全対策が整えられています。

 

国土交通省が定める主なルール・制度

 

貸切バスの安全を守る上で、最も重要な土台となるのが、国土交通省が定める各種ルールと制度です。ここでは、貸切バスを利用するために利用者も知っておきたい、国土交通省の主なルール・制度のポイントを整理してご紹介いたします。

 

貸切バス事業者安全性評価認定制度(セーフティバス)

 

「貸切バス事業者安全性評価認定制度(通称セーフティバス)」は、貸切バス事業者の安全性や安全確保への取り組み状況を評価し、星の数(★1〜★3)でランク分けして公表する制度です。

 

認定事業者は、

  • ・国土交通省・日本バス協会のホームページ上で一覧公表
  • ・バス車体に「SAFETY BUS」マークを貼付
できるため、利用者は「セーフティバスマークがあるか」「認定ランクは何星か」を一つの判断材料として活用できます。

 

ただし、セーフティバス認定があれば絶対に事故が起きないということではないため、「認定+行程の余裕+ドライバーの状態」といった総合的な視点が必要になります。

 

運転者の拘束時間・運転時間・休息時間のルール

 

バス運転者の労働時間等は、厚生労働省の「バス運転者の改善基準告示」により次のような基準が設けられています。

代表的なポイントは以下の通りです。

  • ・1日の拘束時間:原則13時間以内(やむを得ない場合も最大15時間まで)
  • ・運転時間:2日平均で1日9時間以内、4週平均で1週40時間以内
  • ・連続運転時間:4時間を超えてはならない
  • ・休息期間:勤務終了後、継続11時間以上(最低でも9時間を下回らないようにする)

 

2024年4月1日からこのような基準が改正され、拘束時間の上限や休息時間がより厳格化されています。長距離・深夜の貸切バス運行では、交替運転者の配置や行程見直しが求められており、無理なスケジュールを要求する発注は事業者・利用者双方のリスクとなります。

 

行政処分情報・安全情報の公開

 

国土交通省では、バス・タクシー・トラック事業者に対する過去5年間の行政処分状況をインターネット上で公表しています。貸切バス事業者を選定する際、この行政処分情報は重要な「ネガティブ情報」として位置づけられており、ガイドラインでも確認が推奨されています。

 

また、セーフティバス認定の取得状況や先進安全技術の導入状況など、安全に関する情報も公表されており、利用者や旅行会社が「安全性の高い事業者」を見つけやすい環境が整えられています。

 

利用者が事前に押さえるべき安全チェックポイント

 

では、実際に貸切バスを手配する時、担当者や幹事は何を確認すべきなのでしょうか。国土交通省のルールやガイドラインを踏まえ、利用者目線で整理していきます。

 

「許可事業者」であることを確認する

 

まず大前提として、見積もりを依頼する相手が一般貸切旅客自動車運送事業の許可を受けた事業者であるかを確認する必要があります。
「会社名・所在地」「運輸局からの許可の有無」は、見積もり段階で必ずチェックしたいポイントです。

 

セーフティバスマークと認定ランクを確認する

 

観光用の貸切バスの場合、「セーフティバスマークの有無と認定ランク(星の数)」を比較することが有効です。
下記3点を確認することで、安全への取り組み度合いをある程度把握できます。特に大型団体・長距離・夜行運行などリスクの高い行程では、可能な限り評価の高い事業者を選ぶことが望ましいといえます。

  • ・事業者のWEBサイト
  • ・日本バス協会・国土交通省の認定一覧ページ
  • ・実際に手配される車両の車体(SAFETY BUSロゴの有無)
 

行程が「改善基準告示」に照らして無理がないか確認する

 

見積もりを比較する際「料金」だけで判断するのではなく、運行ダイヤに無理がないかを必ず確認すべきです。

 

具体的には、下記3点を、改善基準告示で定められた拘束時間・連続運転時間・休息時間の目安を念頭に置きながら確認していくと、過労運転につながる無理なスケジュールを回避しやすくなります。

 
  • ・早朝出発・深夜帰着を詰め込みすぎていないか
  • ・休憩時間が十分に確保されているか(おおむね2〜3時間ごとに休憩が入っているか)
  • ・片道300〜400kmを超えるような長距離で、交替運転者の配置が検討されているか
 

安さだけを追わず、安全コストを理解する

 

貸切バスの見積もりは、同じ行程であっても事業者によって金額差が生じることがあります。しかし、その差は必ずしも単純な「儲けの多寡」ではなく、安全に必要なコストをどこまでかけているかの違いである場合が多くあります。

 

例えば、長距離や夜行運行で交替運転者をきちんと配置し、運転者が無理なく休める仮眠施設や十分な休憩時間を確保している事業者は、人件費や設備費がそれだけ多く必要になります。また、衝突被害軽減ブレーキや車線変更逸脱警報装置、ドライブレコーダーなどの先進安全装置に積極的に投資している会社も、初期費用や維持費がかかるため、どうしても運賃は一定水準以上になりやすくなります。

 

こうした背景を踏まえると、「とにかく一番安いバス会社」を選ぶことは、安全に必要なコストを削ることと表裏一体であると理解すべきであり、ガイドラインが示す通り、価格だけではなく安全性への取り組みを総合的に評価して事業者を選定する姿勢が重要です。

 

まとめ

  貸切バスを安全に利用するためには、下記3つの柱を理解しておくことが重要です。  
  • ・国土交通省が定める運転時間・休息時間などの法令上のルール
  • ・セーフティバス制度や行政処分情報などの安全情報の見える化
  • ・「貸切バス選定・利用ガイドライン」に基づく発注者・利用者側の適切な選択と配慮
 

貸切バスは本来、安全で快適な移動手段であり続けるべき存在です。国土交通省が定めるルールと制度を理解し、利用者自身も「安全第一」の視点を持って事業者選びと行程作りを行うことが、安全なロケや観光旅行への一番の近道であるといえます。

 

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